妊活ダイアログ 七変化さん Vol.4
この企画では、経験者の声、お医者さんの言葉、
妊活や不妊治療にまつわるアレコレを綴ります。
どんな未来が待っているんだろう。
あなたのいろんな未来の可能性を見つけてみてください。
新たな一歩を踏み出すために専門病院を受診
子宮の卵管造影検査を行った後、どうやって帰宅したのか覚えていない。
しばらくは冷静に結果を受け止めることができず、ふとした瞬間にあふれる涙をこらえることもできなかった。
他の人に比べると子どもができにくいことはうすうすわかっていたし、セックスレスとは行かないまでも、当時夫婦の性交渉の頻度はそう多くはなかったから、そんな簡単には妊娠しないだろうと理解していた。
それでも、物理的に「卵子と精子が出会えてすらいない」という現実を知るのはキツイ。
新天地での仕事が忙しく、日々帰宅が遅い夫も、私の憔悴ぶりを心配していた。後で聞いた話だが、子どもがほしいのに夫婦の性交渉が少なくなったことに負い目も感じていたのだという。
これは、子どもが欲しくて悩む夫婦なら誰もが感じる矛盾?であり悩みではないかと思う。「決まった日」にしなければならない=義務的になってしまい、セックスが上手く行かなくなってしまう。夫いわく、「それほど気持ちが高まっていないのにセックスはできない」とのこと。私も同じ気持ちで、夫婦仲は悪くないのに、性交渉の機会も減っていった。
そんな状況にあり、さらに判明した「物理的に精子と卵子が出会えていない」事実。
「じゃあ、どんなにセックスをがんばったところで、無理じゃん!?」
それでも、あきらめたくはなかった。再び件の掲示板を開き、不妊治療に力を入れる病院探しに没頭した。近隣エリアのみに絞らず、エリアで最も都会であるB市を中心に、行ける範囲の病院の口コミを懸命に探す毎日。
県内では大きな都市であるB市にだけ、複数の病院がヒットした。口コミ等を総合すると、不妊治療に特化している病院は総じて治療費が高額な印象。医師にもかなりのクセがある、患者が守らなければならない独自のルール?があるクリニックも少なくない。
そんな中、ちょうど中堅どころというか、昔からある老舗の婦人科の口コミが目に止まった。産科も併設しており、不妊治療は別フロアで行っているという。口コミを見ると、そこまで厳しい感じでもなく、男性から女性まで複数の医師が在籍しているようだ。タイミング法から人工授精、体外、顕微受精まで行っており、技術にも定評がある。
「これなら、合わない先生でも変えられるかもしれないな」
折しも、夫の職場で高齢出産した同僚がこのクリニックに通院していたらしいとの話を聞いた。老舗の病院で、安心感は抜群なのだとか。電車を1度乗り換える必要があるが、トータルで30分~40分とアクセスも悪くない。何だか縁を感じて、早速出かけてみようと思い立った。
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初診は予約ができないようなので、基礎体温とこれまでの治療歴をまとめてプリントアウトし、早い時間に自宅を出発。クリニックに到着したのは朝の9時。
「ちょっと遅くなっちゃったかな?でも診察開始が8時30分だし……」
クリニックの扉を開けると、本当に多くの女性たちが診察を待っていた。
夫婦で来ている人もいる。落ち着いた年代の人から、若い女性まで、本当にたくさんの人、人……。
もちろん婦人科のクリニックだから、不妊治療での受診だけではないのかもしれない。ただ、「こんなにたくさんの人が悩んでいるんだなぁ」とあらためて思い至った。掲示板上の不妊治療を続ける多くの人の存在を知っていたけれど、ここまでたくさんの同志(この言葉は的確ではないかもしれない)を目の当たりにしたのは初めてだから。
目の前で待つ女性たちに圧倒されながら、自分だけじゃないんだ、という安堵も感じていた。
どれくらい待っただろうか。思ったよりは早く順番が回ってきた。
診察室に入ると、50代くらいの女性ドクターが私を待っていた。
このドクターも子宝に恵まれず、数々の治療を受けた経験を持つことはHPで見て知っていた。婦人科疾患の内容も私に近いから、このドクターがいる日を選んだのだ。
「初めまして七変化さん。治療歴拝見しました。本当に大変だったねえ……。とにかく内診して、あなたの今の状態を教えて下さい」
本当に優しい口調で、これまで出会ったどの医師よりも丁寧だった。早速診察室の横にある内診エリアで、エコー(経腟超音波検査)を受けることになった。
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「痛くないですか?痛かったらすぐに教えてね」
内診も語り口同様、丁寧。
ただ、私の子宮や卵巣は腫れているようで、ときどきチクッと痛みを感じる箇所もあった。
「……。痛いでしょう。子宮が一般的な大きさよりかなり大きいよ。卵巣も腫れています。おそらく、内膜症と子宮腺筋症があるね」
子宮腺筋症???なに?それは?
今まで聞いたことすらない。内膜症かもしれないとはうすうす感じていたけれど。
内診エリアから戻り、再びドクターと向かい合う。
「まだ検査しないとわからないけれど、あなたの卵巣は内膜症が悪化して、子宮と癒着しているように見える。内膜症の治療をしつつ、30代のうちに不妊の治療を進めて行ったほうがいい。できれば高度治療に進んだほうがいいかも。それはご主人の考えもあるだろうし、おいおい考えていきましょう」
呆然とする私をゆっくり見据えて、彼女は続けた。
「これだけの子宮の大きさだったら、生理痛はこれまで相当ひどかったはず。よく我慢したね。普通の人だったら、痛くて耐えられないよ。七変化さんは頑張りやさんだね」
治療のために病院にかかって、初めてかけられた優しい言葉。
そして、生理の重さを理解し、受け入れてくれた初めての人。
あーーーーーーやっぱり、私の生理はひどかったんだ。
やっぱり、子宮や卵巣に疾患があったんだ。
心を塞いでいた重しがひとつ、なくなった気がした。
(文/七変化)
※この連載は個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。
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