妊活ダイアログ 七変化さん Vol.3

この企画では、経験者の声、お医者さんの言葉、

妊活や不妊治療にまつわるアレコレを綴ります。


どんな未来が待っているんだろう。

あなたのいろんな未来の可能性を見つけてみてください。





治療の情報を求めて続くドクターショッピング



近所の産婦人科クリニックに通院しながらも、セカンドオピニオンを考えていた当時の私。けれど、知り合いは少なく、ただでさえ口にしづらい「不妊」の情報はなかなか入手できなかった。


そこで役立ったのが不妊治療を行っている病院についてのインターネット上の掲示板だ。大きな都市に比べて情報は少ないものの、近隣エリアの情報も記されている。病院情報の他、「子供がほしい」と願う女性の思いも綿々と綴られていて、顔も知らない誰かの思いに共感、涙することさえあった。


その掲示板によると、隣のA市に「患者思いの」不妊治療にも対応する婦人科があるという。早速予約を取り、たまたま休みを取れた夫と受診した。「患者思いで優しい」と口コミのあった院長先生は、仏頂面で私の基礎体温表を見るなり、こう言った。


「奥さんの方の周期は問題ないみたいね。夫婦ですることしてるの?しているのなら、ご主人に原因があるかもね」


そして続けた。

「基礎体温表はうちのクリニックのものを買って。そうしないと見ないから」


どこが患者思いのクリニックだというのだろう。唖然として、声も出ない。

ただ、自宅からのアクセスもよく、しばらく通院してみることにした。


私の経験だけなので一般論ではないと先にお断りしておくが、不妊を含めた婦人科の医師はなぜか高圧的な人が多かった。理由はわからないが、質問することもはばかられるような独特の雰囲気を感じる場合が多々あった。


今の私なら、すぐに病院を変えただろう。でもそのときは、何だか負い目があったのだ。

「妊娠できないのは私なんだから、従わなきゃ」


そういった負い目が被害妄想?のようにあり、私が医師に威圧感を感じる理由となっていたのかもしれない。



通院することにしたA市の婦人科は体外受精などの高度不妊治療も行っているが、治療は一足飛びには行えない。必ず院長が治療のスケジュールや方針を決める。不妊に悩み疲れた人たちは、医師をまるで神?であるかのように崇めるパターンもある。少なくとも私は、その方向に心が傾き始めていた。


A市もなかなか大きな市ではあるが、私の自宅から20分ほどのB市がダントツの都会で、地方とはいえそちらならもっとさまざまな不妊専門クリニックは選べる。なぜB市で探さないのか。


この後に及んでまだ、「そんな本格的な治療はしなくてもいいはず。私たち夫婦は」

という思いが強かったからだ。



その婦人科でも高度治療というよりは、タイミング法プラスアルファが行われた。排卵日近くに女性ホルモンのひとつ卵胞ホルモン剤を服用し、じっくり卵(卵子)を育てるのだという。ホルモンの服用は私の内膜症をより悪化させたように思う。排卵日の腹痛はひどく、生理は……まるで噴水のようにとめどなく血が流れるのだ。


もともと生理がひどい私だったが、夜用ナプキンが30分ともたない状況に恐怖を感じた。このままでは妊娠どころか、子宮が壊れてしまう。それでも院長は、私たち夫婦の努力が足りないような口ぶりで「また来月だね」としかいわない。


もう、もう無理だ。



意を決し、今度は別の婦人科で子宮卵管造影検査を受けた。


自然妊娠を期待する際、まず卵子と精子が出会えているかを確認しなければならない。そのため、卵子と精子の通り道である卵管に問題がないか調べる検査を行う必要がある。それが子宮卵管造影検査だ。造影剤を子宮から卵管に注入、子宮の形や卵管の通りをレントゲンで観察するもので、問題がなければ卵管の通りをよくする効果も期待できるとされる。


懲りもせず、またあの掲示板で子宮卵管造影検査の口コミを確認した。「痛い」という声、「そうでもない」という書き込み、そして何より「検査の後、自然妊娠した」というコメントに歓喜しながら。



実際に受けた検査は––––––––激痛だった。


レントゲンに映し出された真実は残酷だった。

卵管が通っていないため、流し込んだ造影剤が周辺に散らばっていないのだ。

卵管の先端(卵管采)周辺はもやもや、よくわからない状態に見える。

困ったように、医師は言った。


「これでは、自然妊娠は難しいでしょう」


「ギャアアア」


検査の痛みをこらえ、医師の話を聞いていたはずの私。

それなのに、分別のある大人が出すはずのない、大きな大きな悲鳴を挙げてしまったのだった……。




(文/七変化)

※この連載は個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。

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