わたしの引き出しの奥から Vol.1 フードデザイナー 細川芙美

かっこよく生きたいわたし。

誰かの憧れでありたいわたし。

頑張ることに疲れたわたし。

これから出会うのは、迷いながらもまっすぐに、自分らしい人生を重ねている女性たち。


「わたし」とは、彼女であり、あなた自身です。

彼女たちの言葉が、わたしらしい明日を生きるためのきっかけになりますように。


Instagram で、そのフォトジェニックなスタイリングと圧倒的な美味しさの⼝コミがみるみる広がり、話題になっているフードデザイナーがいる。

細川芙美さんは⾃⾝のブランド「collection humi hosokawa」として、⽇々たくさんの⼈にお弁当を届けて、芸能⼈やモデルをはじめ多くのファンを虜にしている。彼⼥のインスタグラムは約1 万4000 ⼈からフォローされ、毎回の投稿には1000 個近いいいね!が当たり前。「#深夜のひとりじめ飯」と呼ばれるお料理ライブ配信では、画⾯からいい匂いすら感じられそうな、おいしそうなご飯が眠る間際の私たちの胃袋を刺激する。

Instagram @humihosokawa より

たくさんの⼥性が彼⼥と彼⼥の作る料理に魅了されている。何がそんなにも彼⼥を魅⼒的な⼥性にし、⼈を惹きつけるのだろうか?


―元々陸上競技をやっていらっしゃったと伺いましたが、どういう経緯で料理の道を歩むことになったのでしょうか?


「スポーツで短⼤へ進学して、保育を学んでいました。運動をやっていたのもあって漠然と体育教師になるんだろうなとは思っていたんですけど、いざ仕事を探すとなった時に、⼦供は好きだし可愛いけど、ずっとやって⾏く仕事とは違うかなって思い始めたんです。栄養や⾃分の体調を気にしていたのもあって、それで料理を学ぶことにしました。作るのって良いかもと思って。そこから親に頼んで、どうにか調理師学校に⾏かせてもらったというのが始まりです」


―調理師学校を卒業してからは、名古屋の結婚式場でフレンチの料理⼈としてお勤めされたんですね。フランス料理に限らず、料理の世界ってすごく男社会だと思うのですが、その中で⾟さはなかったのですか?


「ありがたいことに、楽しいという思いの⽅が強かったですね。基本的に重労働だし、労働時間が⻑いっていうのもあって、体⼒的にきついことはありましたけど、メンタル的にきついっていうのは全然ありませんでした。仕事は好きだったんですけど、ずっと続けられる仕事じゃないなってふと思ったんです。体育の先⽣になるか悩んでいた時と同じですね」

―それで、また違うことを始めようと決断されるのですね。


「本当のやりたいことを探そうくらいの気持ちで、“辞める”を先にしました。実家が⼤阪なので、名古屋から戻るか。でも戻ったら負けたみたいな感じが嫌やし。で、就職先も何も決めず東京へ。持っていたのはマジの、リュック⼀つでした(笑)ちょうどその時、テレビ番組である⼈の特集をみたんです。その⼈は⾼級フランス料理店でホールサービスを⾏う⼈。権威ある国際⼤会で2 位に⼊った⽅で、かっこいい!これやー!!!と思って、すぐに働かせてほしいって店に電話しました」


―フランス料理店でサービスを提供するお仕事をされていて、そこから今現在のお仕事であるフードデザイナーになるまでの道筋はどんなものだったのでしょうか?


「毎タイミング、『これはずっと続ける仕事じゃない』っていうのが降りてくるときがあるんです。そもそもそこに⾏きたいと思ったのも、その⼈の働いている場所の空気を体感したいっていうのがゴールだったので、『次探さな!』っていう感じでした。そうしたら、たまたま美容室で読んだ雑誌のケータリング特集に、とある料理家さんの記事があったんです。すごく⼼動かされました。それでまた『アシスタントさせてください!!』って⾔ったのが始まりです」


―その⽅に出会って、「これずっと続ける仕事じゃないなあ」とは思わなくなったと。


「そうですね。それまでと違って、初めて『この⼈になりたい』って思ったんです。それまでは、“仕事”としてものを考えていたんです。体育教師、レストランの料理⼈、⾼級フレンチレストランのサービスとか。その料理家さんに会って、その⼈の作品とか働いている姿を⾒て、『この⼈の“私バージョン”みたいになれたら最⾼じゃないか!?』と思うようになりました。そこからはあの⾔葉“これはずっと続ける仕事じゃない”は降りてこなくなりましたね。“肩書き”になるんじゃなくて、⾃分がなったものが“仕事”。始めて仕事の本質みたいなものに気づいた感じです」 

―それからお⼀⼈で独⽴されるんですね。そこに⾄るまでにたくさんの変化を迎えていらっしゃいますが、“何かを変える”ってすごく勇気がいることだと思うんです。細川さんの場合はどうだったのでしょうか?


「何かが変わるときって、興奮状態にあるというか、『なんかしたい!このままじゃ嫌だ!』っていうアドレナリンが出ているんですよね。新しいことを欲している状態だから、怖さとかはあんまりなかったですね。決断をぽんぽんしている、というよりは、これをやったからって死ぬわけじゃないんだから、いっか。という感じです(笑)」


―きっと、細川さんのようになりたいと思っている若い世代の⽅にとって、独⽴ってすごくハードルが⾼いことですよね。そう思っている⽅が多いと思います。


「そうですね。でも⼀つ⾔えるのは、とにかく経験値だと思うんです。料理の世界では、1つの所で⻑く修⾏するのが1 番いいって思われているところがあって。やりたいことがあって辞めても、それを成し遂げなければ、仕事が⾟いと⾔って辞めた⼈と同じになってしまう。⾃分は絶対にそうはなりたくなかった。当時周りには私のことをそういう⽬で⾒る⼈もいたし、『飽き性なんかな』とか、『⾃分は⼀⽣⼀つのことを続けられない⼈なんだろうな』っていう不安はもちろんありました。⼀つのことを⻑く続けることが世間的にも良いって思われている。でもそれだけじゃないと思っています。今胸を張って⾔えるのは、いろんなことをやったおかげでやりたいことが⾒つかったって事ですね」


「何かあったら、そのとき考えればいい」

そう⾔って細川さんは笑った。

―細川さんのSNS をいつも拝⾒させていただいているのですが、天真爛漫に笑っていますよね。誰もが格好つけて、繕っている部分が少なからずはあると思いますが、細川さんはそれを感じさせません。


「カフェでのんびり読書とかして知的に⾒せることも、⾃然の中をランニングしてリフレッシュ、なんてヘルシーな⼈の作るお弁当なんだ!って思わせることもできるとは思うんですけど、それって実際の私とはかけ離れてるなって。お弁当もそうです。彩り鮮やかでキレイで可愛いのもいいけど、たとえお⾁ばっかりの真っ茶⾊のお弁当になろうとも、本当に美味しいものが欲しい。それを思い返した時、『⾃然体の⽅がきっと美しい』って思うんですよね」


―ありのままの⾃分を⾒せる。⾃分⾃⾝も、お弁当も、格好つけないということですね。


「⾃分も、『無理していない、“らしい”⼈って素敵だな。こんな⼈になりたいな』と思います。そのまんまの⾃分に共感してもらえて、何か伝わるものがあればいいなって」

―細川さんはこれからどんな⼈になっていきたいですか?


「無理しないけど諦めない⼈ではいたいと思いますね。今回も含め、⾊々なところで取り上げてもらえることが増えてきて思うことは、私のなんとない発⾔が誰かの共感を得たり、そこから何かのアクションが⽣まれていたりする。それに私はすごく感動して。それならもっともっと何かを起こしていきたいって、すごく思うようになりました」


―細川さんが周りを動かして、さらにその周りの声が細川さんを動かしている。ということですね。


「今は本当にそんな感じです。私がいろんな事に対して、「これだ!!」と思って経験を積んできたのと⼀緒で、私を⾒てそれが誰かの⼈⽣が変わるきっかけになったら、もうそんな幸せなことはないなと思います」


―では、これからも細川さんはどんどん新しいことをやっていこうと。


「はい。新しいことやりたいですね。なんでもできるように、“フードデザイナー”という⼤きめな肩書きをつけてます。私、何も変わらない、何も起こらないことが⼀番怖いんです。来年も、変わらずこのお弁当屋さん続けているのを想像すると、めっちゃ怖いです。周りから⾒たらお弁当やさんだからお弁当やさんをやっているって、当たり前のことだと思うんですけど、私はいても⽴ってもいられないです。新しいことして失敗する⽅がいいと思っています」


「つまらない、何をしたらいいかわからない、でも何か変えたい、そんな時は、「つまらない」を全⼒でしてみる。とことんつまらない⾃分になってみるのもいい。新しいこと始めたいのに始められないんだったら始めなくていいと思います。体が勝⼿に動いてしまうくらいまで溜めておいたほうが、ポジティブな結果になると思う。ほんまにやりたくなったら、それを思ったら眠れない、時間を忘れてしまう、そういう状態になるので、そうなったらゴー!だと思っています」

細川さんが最後にこう⾔った。

「ざっくりでいいんだと思います!⼈⽣は!」


無理しない。でも⾛り続ける。失敗したら⽴ち⽌まって考えればいい。

飾らないおいしい料理。彼女にしか作れない彼女らしい料理だ。そしてその彼女らしさが、これからも私たちを魅了し続ける。



細川 芙美(ほそかわ ふみ)

 ⼤阪泉⼤津市出⾝。調理師学校卒業後、フレンチレストラン、料理家のアシスタント、料理教室などを経て、2015 年に独⽴。「collection humi hosokawa」として、ロケ弁を中⼼にレシピ提供やメニュー監修などフードデザイナーとして活動。2018年4⽉より代官⼭にアトリエを構え、ロケ弁では⽉替わりではなく12星座で替わる星替わり弁当など、ユニークなテーマで展開。また、#深夜のひとりじめ飯というテーマで夜な夜なひとりじめしたいご飯をインスタLIVE で配信中。


(⽂/道端 真美 撮影/平⼭ 祐梨)


BLUEVIOLET

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