妊活ダイアログ 七変化さん Vol.1
この企画では、経験者の声、お医者さんの言葉、
妊活や不妊治療にまつわるアレコレを綴ります。
どんな未来が待っているんだろう。
あなたのいろんな未来の可能性を見つけてみてください。
初潮は11才。生理との付き合いはかれこれ35年になる46才の七変化(ペンネーム)です。
これまでのライフイベントに、必ず影響を及ぼしてきた生理。本来なら子供を授かるために不可欠なシステムのはずが、なぜか私の邪魔をしてくるのだから不思議です。
それでも子供がほしかった私は、30代半ばから40前半までほとんどの時間、生理と不妊治療に向き合って過ごしてきました。あの悩んだ日々がどなたかの参考になることを祈って。
生理がひどい。赤ちゃんも来ない。どんどん追い詰められていた30代前半
「大丈夫ですか?」
通勤途中の電車の中。東京の西の端から東側にある都心部に通勤していた時は、混雑した車両の出口付近が定位置。
だって、すぐに降りて駅のトイレに駆け込めるから。
長い通勤時間のあいだ、下腹部の鈍い痛みはどんどんひどくなっていき、毎月毎月、うずくまってしまう。
大勢の通勤客の刺さるような視線がつらい。
だから優しい人に声をかけられると、そのまま倒れ込んでしまいそうだ。
でも私は結婚し、会社にほど近い東側に引っ越したはず。会社へは数駅で済む路線に変えたから、もう大丈夫だと思ったのに、やっぱり車内でうずくまってしまった。
声をかけてくれた優しい人にお礼もそこそこで途中下車をする。また会社に遅刻してしまう……。
「また月のリセが来ちゃったよ」。
私は幼少時から生理がひどい。
経血量も多いし、何より生理前の腹痛や頭痛、貧血、体中の不調は、すべて生理周期が関係していたが原因だった。11才に初潮を迎えて以降は、まるで生理に支配されるように生活は変わっていった。
走ることが大好きだった華奢な体はむくみ、学校では常に下着や椅子を汚していないか、ナプキンを変えることに集中する日々。女らしい丸みを帯びた体は、赤ちゃんを迎える準備のためなのだというけれど。
「赤飯でお祝いする意味がわからない」ほど、生理を憎んだ。
「おねーちゃん、生理って何か嫌な言葉だし、リセにしない?」
ある日、2つ下の妹がそういった。雑誌『Olive』の世界観に憧れていた世代の私たちにとって、憧れのフランスの少女たち、リセエンヌ。毎月1回の苦痛な時間を憧れの「リセ」の世界観でごまかそうという苦肉のアイデア?だったのだ。
今から考えると、何のひねりもないバレバレの呼び方なのだけれど。
そして「リセ=生理」の発案者である妹は、私の後に結婚したはずがすぐ妊娠。
姉を追い越して32才で母になった。
兄弟・姉妹がいる人ならわかると思うが、「きょうだい」って不思議な存在だ。特に同性だとなおのことかも知れない。愛しくて、大事な存在であるはずなのだけれど、何となく自分より優れていると悔しい。
私は結婚して数年経っても子供ができないのに、妹は割とすぐ子供に恵まれた。それはとてもめでたいこと。嬉しいのに、胸の奥でくすぶるモヤモヤをどうにもすることができないでいた。
いやいや、子供ができる・できないは、優れている・いないとかじゃないでしょう。「スイミングスクールで妹が先に昇級した」「私より優秀な学校に入った」、そんなのとは違うのだから、悩むほうがおかしいって。
打ち消しても、打ち消しても、浮かぶ苦しみをどうすることもできない。
初めての孫に、地方に住む両親も大喜び。そしてこう言うのだった。
「そろそろ、あなたの家でも子供を考えたほうがいいんじゃないの?」
わかってる、わかってるよ。
結婚して、あらためて妊娠の仕組みを勉強した。排卵前後のそのチャンスに合わせて行為をしなければ子供はできない。毎月1度、1年で12回しかチャンスはないのだ。
あんなに「授かり婚」が話題になるのに。子供を授かるのは奇跡や偶然の産物なのだと知った。
しかも、排卵は必ずしているわけではないし、相手(夫)が体も心もベストな状態とは限らない。
一緒にいることで愛情を示すタイプの夫。スキンシップは頻繁だけれど、積極的に性行為をするのを好まない。それでも子供がほしいから、気持ちを奮い立たせてくれるのだが、うまく行かないことも多かった。
月に1回、必ずしなければならないという義務感に、私も夫も追い詰められていく。
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結婚したら、子供は自然に授かるってドウシテオモエタノ?
その根拠は?
日曜日のショッピングモールには幼子を連れた幸せそうな家族がいっぱい。
友達からの「家族が増えました」のハガキは、毎年増え、枚挙にいとまがないほどだ。
そして、大好きな妹の妊娠。
そしてそしてそして。
今日もやっぱり「リセ」が来た。
引きちぎられそうな下腹部の痛み。
脂汗がとまらず、気の遠くなりそうな苦しみ。
ねえ、私の体はおかしいの?
皆が普通にできていることがなぜできないの?
誰か答えてよ!
いつもなら悩みを相談できる母や妹、友達にも話せない。
夫に気付かれないよう、夜な夜な声を殺して泣き続けた。
そんなある朝、先に出勤した夫からの書き置きに気づいた。
「病院に行ってみよう」
(文/七変化)
※この連載は個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。
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