妊活ダイアログ CHIKAさん Vol.2

この企画では、経験者の声、お医者さんの言葉、

妊活や不妊治療にまつわるアレコレを綴ります。


どんな未来が待っているんだろう。

あなたのいろんな未来の可能性を見つけてみてください。





ある夏の出来事 ー転院とそれからー


念願だった妊娠を確認できたが、どうしても病院になじめずに転院をした。

新しい病院はさらに近所で通いやすく、妊婦さんや子供連れが多くいつも混みあっていたが「大きい病院にきたなぁ」という安心感があった。


違う病院で妊娠を確認してもらったことを告げて診察されると、先生から「小さな袋は見えているけど、まだ心音が確認できないから次に来た時ぐらいに確定かな。」と言われた。

「え?まだ確定じゃないの?」と焦ったが、渡されたエコー写真を見ると小さな袋が前回よりも少し大きく写っていて、安心した。



次の診察までの間、妊娠した事を管理するアプリに色々と情報を入力して、お腹の中の成長を見守るのが日課になった。


そしてその頃から体に色々と変化が出始めていた。とにかく朝起きた瞬間から気持ちが悪い。さらにお腹がすくとまた気持ち悪くなる。


「これが世に言う“つわり”か……。」


仕事は結婚前と変わらずアパレルの販売員を続けていたので少し不安だったが、案の定仕事中もおかまいなしに気持ち悪くなる。接客中は多少気がまぎれるが、それ以外の作業をしている時はつらい。アパレル販売員と言っても、接客ばかりでなく意外に重たい物を運んだりすることが多い。もちろん一日中立ちっぱなしだったりすることにも不安があったので、少し早かったが会社に報告することにした。すると、上司は喜んでくれ、「無理しないようにね!お腹が空いたらちょこちょこお菓子つまんでいいからね!」と色々気づかってくれた。


次の検診を前に少量の出血があった。ものすごく不安になり病院に連絡をして、早めに検診を受ける事に。

診察を受けると「妊娠初期によくある出血だから大丈夫だけど、出血が多くなったらまた連絡してください。」と言われた。

不安で「このまま出血が止まらなかったらどうしよう……。」とモヤモヤしながら帰宅した。


あまり気にし過ぎもよくないなと思ったが、気になってしまいすぐにインターネットで検索してしまう。


【妊娠初期 出血】


出てくる結果にはほとんどいいことが載ってないので落ち込む、気にしないようにする……の無限ループで、毎日神経をすり減らしていた。




出血から2〜3日後の朝、なんだか嫌な予感がした。



目が覚めるといつもの気持ち悪さがない。そしてその予感が当たり、トイレに行くと前回よりも多い出血。いてもたってもいられなくなり、すぐに病院へ行くことに。その日は旦那の仕事が休みだったので一緒について来てくれた。


病院に行く途中お寺があり、毎回そこでなんとなくお参りをするのがルーティンだった。その時は「無事でありますように。」と真剣にお願いをしてから病院へ向かった。


待合室は相変わらず混み合っていた。

いつもならなんて事ない風景だが、その日は違った。自分だけが不安でどうしようもなく、周りがみんな幸せそうに見えて、いつも長い待ち時間がさらに長く感じた。

順番が来て、エコー確認をされている間も気が気ではなかった。

診察後に先生からエコー写真を見せられた。前回と何も変わらない様に見えたが、先生は写真を見せながら淡々と喋り出した。


「残念だけど心拍が確認できないので、今回は流産ですね。これから出血がさらに増えてちょっと大きなかたまりが出てくると思うから、それが出てきたらビニール袋に入れて持って来てください。」


「流産…?」


一番聞きたくなかったその言葉。


耳に入ってきた瞬間から、ショックのあまりぼんやりとしか先生の言葉を聞くことができなかった。

この時のことはちゃんと覚えていないが、お会計をしている時に涙が止まらなくなり、受け付けの方がギョッとしていたのだけはハッキリと覚えている。



外に出てワンワン泣いた。

その時に初めて「私は妊娠していたんだなぁ」と実感した。

そして先生のあまりにもあっさりとした対応を思いだし怒りがこみ上げてきてさらに泣いた。

旦那は、自分もツライはずなのにずっと慰めてくれた。

「今日は旦那がいる日で本当によかったな…」と心底感謝しながら2人でゆっくり歩いて帰宅した。



その後1週間ほど、生理よりも多いくらいの出血が止まらず、一日のほとんどをトイレで過ごした。会社にも報告していて、休ませてもらえたのはよかったが、お腹は痛いし、悲しいし、地獄のような1週間だった。トイレにいる時間以外はほとんどベッドの中で、何も考えないで見ていられる映画やドラマをずっと見ていた。


それにも飽きてくると「もしかしたらまだ可能性があるかも…」と考えてしまい、またしてもインターネットで色々と検索してしまう。同じ状況の人のブログやSNSを見つけては、読みふけり、思い出しては泣いた。


そんな中、とある同じ周期ぐらいに流産したという人のブログを読んだ。「出てきた我が子を手ですくいあげて愛でた」とか「朝が来るまでの間、病院の待合室で夫婦2人、毛布にくるまって眠った」とか、あまりにも物語のようにキレイに書かれすぎている内容を見て、違和感から急に現実に戻った。


実際はお腹が痛すぎて愛でるどころか、自分のことでいっぱいいっぱい。便器に素手は入れられないし、病院は長居させてくれない。

「いやいやいや、これ本当?ちょっと話盛りすぎてない?」

ツッコミだしたら止まらなくなり、ちょっぴり悲しさから抜け出せ、検索するのがバカらしくなってやめた。


1週間後、出血がおさまったので、先生に言われた通りに出てきた血のかたまりの一部をビニール袋に入れて病院へ。

色々検査をした後「子宮の中は空っぽになっていますが、妊活を再開するのは次の生理が2回きてからにして下さい」と言われた。

分かってはいたが、先生のあまりにもあっさりとした対応は悲しみに追い討ちをかけた。そして最後の受診料だけそれまでと比べてかなり高額でびっくりした。受け付けで理由を聞くと、「今回は妊娠したことになるので保険適用外です。」と言われてさらに落ち込んだ。



こうして私の短い妊婦生活はあっけなく終わった。

妊娠して出産するって本当に奇跡だと思う。


毎年夏が来ると思い出すこの切ない出来事は、決して笑い話にはできないけれど、こうして誰かに読んでもらって、少しでも気持ちに寄り添えたらいいなと思える様にまでなった。

小説の様にキレイな話にまとめることはできないが、子供が欲しい人やそうでない人にもリアルな体験として知っていて欲しい。



秋が来て夫婦共にまた一つ歳をとり、3ヶ月ぶりに生理がきた。ここから私たちの妊活の第二章が始まる。




(文/CHIKA)

※この連載は個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。

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